はじめに|「旅の目的が“推し”になった時代」
「この前の週末、○○の聖地に行ってきたんだ」
「ライブ遠征で地方に行ったついでに観光も楽しんできた」
そんな言葉が、若者を中心に当たり前になってきました。
いま、Z世代を中心に広がっているのが、“推し活”とセットになった観光スタイルです。
- アイドル・俳優・声優・アニメキャラの「聖地巡礼」
- ライブ・舞台・イベントを目的とした「遠征」
- “推し”にゆかりのある飲食店や土地をめぐる「推し旅」
こうした“好き”を起点とした旅は、従来の観光とは異なる動機で動き、地域に新しい経済効果と文化的広がりをもたらしています。
推し活観光の主なパターンと動き方
■主なジャンル
- アニメ・漫画・ゲーム(聖地巡礼)
- アイドル・俳優・VTuber(ライブ遠征)
- ご当地キャラクターやローカルアイドル(地域との共創)
■行動パターン例
- “推し”が紹介したお店を巡る
- フォトスポットで“推しぬい”と記念撮影
- SNSで感想投稿+ファン同士の情報交換
このように、旅先での“目的性”が非常に強く、滞在意欲も高いのが特徴です。
地域にとっての“推し活観光”の価値とは?
推し活観光がもたらす価値は非常に大きなものがあります。
■1. 経済効果
- 大ヒットアニメの舞台となると、推し活旅の経済効果は数億円にも及ぶことがある。(参考)
- 宿泊・飲食・交通・グッズ購入など、地域経済への波及効果が大きい
■2. 長期的ファン化=リピーター創出
- “推し”に会いに来るだけではなく、地域そのものに愛着を持つファン層が生まれる
- 年単位で複数回訪れる人も多く、関係人口化の入り口にもなりうる
■3. SNSでの情報拡散効果
- 滞在記録・写真・感想が自発的に投稿される
- 観光協会や自治体が狙ってもできないリアルな広報活動になる
地域側の課題とチャンス
とはいえ、地域側が対応に戸惑うケースも多くあります。
● よくある課題
- ファンが集まる場所が生活空間と重なることでトラブルに
- 公共マナー・ごみ問題・無許可撮影など
- 一過性のブームで終わってしまう
● チャンスと工夫
- 地元店舗とコラボした「推し旅MAP」配布
- SNSで先回りしてマナー啓発や「推し撮影OK」スポットの提示
- 地域の隠れた魅力を発掘
データ活用で見える“推し旅”の行動傾向
推し活観光は、感情・熱量・行動の再現性が高いのが特徴です。
そのため、下記のようなデータ活用が可能です。
■1. SNS投稿・ハッシュタグ分析
- どんな場所が多く言及されているか
- 来訪時期や頻度、エンゲージメントの高さ
→ 例:「#聖地巡礼 #○○町」の投稿時間帯・推移を確認
■2. 予約・滞在データと“イベント日”の重なり分析
- ライブ日や周年記念と地域の混雑状況
- 交通・宿泊予約データとイベントカレンダーの連携
→ ピーク時の臨時バス・トイレ増設の予測にも
■3. 行動ログ・位置情報データのマッピング
- “どの順路でまわっているか”
- 滞在時間の長さ、立ち寄り場所の傾向
→ 新しい観光ルートの設計・推し活向けマップの制作にも活用
これからの地域に必要な視点は“推しの受け入れ力”
“推し”という言葉は、個人の趣味のように見えますが、
「地域とつながる新しい導線」にもなりうる、非常に強い行動の動機です。
自治体や観光事業者がこれをどう受け止めるかが、
- リピーターの創出
- 地域イメージの更新
- 若年層との接点づくり
に大きく関わってきます。
いま必要なのは、「地元らしさ」や「風情」を守りつつ、
“推し活を受け入れる器”としての懐の深さを持つことかもしれません。
まとめ|“推しがいれば、人は動く”。その行動が地域を変える。
観光の目的は、名所やグルメだけではなくなってきました。
「推しに会う・近づく・感じる」ために旅に出るという行動が、
新しい観光動機として急速に定着しつつあります。
データを使えば、その動きを読み解き、次の一手を設計することも可能です。
- “推しが訪れた場所”を起点に関係人口が生まれる
- “推しのために来た町”が“自分にとって大事な場所”になる
そんな未来が、すでにあちこちで始まっています。