観光地のリピーター・関係人口を育てる“地域ファンづくり”の方法

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はじめに

観光施策というと「来訪者数を増やす」「消費額を伸ばす」といった短期的な成果が注目されがちです。しかし、人口減少や旅行スタイルの多様化が進む今、地域の観光が持続的に発展するためには、ただ一度訪れるだけの旅行者を増やすのではなく、地域を継続的に応援し、関わり続けてくれる“ファン”を育てることが重要になっています。

こうした「地域ファンづくり」は、関係人口やリピーター施策とも重なり合う概念であり、観光庁や多くの自治体・DMOが注目し始めています。ファンは再訪するだけでなく、口コミやSNSで地域の魅力を発信し、特産品の購入やふるさと納税などを通じて経済的なつながりを持ち続けます。

つまり、観光の成果を「来訪者数」や「一時的な消費額」だけで測るのではなく、どれだけ地域に愛着を持ち、継続的に関わってくれる人を増やせるかが今後の鍵となるのです。

第1章:地域ファンづくりとは何か

「地域ファンづくり」とは、観光客を単なる“一度きりの来訪者”としてではなく、地域に継続的に関わり、応援してくれる存在へと育てていく取り組みを指します。

観光の世界ではこれまで、「来訪者数」や「宿泊者数」といった量的な成果指標が重視されてきました。しかしファンとなった人々は、単なる数字以上の価値を地域にもたらします。具体的には、

  • 再訪(リピーター化):繰り返し訪れることで安定的な消費を生む
  • 発信(口コミ・SNS):自身の体験を通じて他の人を呼び込む
  • 支援(関係人口化):ふるさと納税や特産品購入などで地域に継続的に関わる

といった行動が挙げられます。

地域ファンづくりは、単なる「観光客の増加」ではなく、地域と人との長期的な関係性を築く取り組みです。観光の持続可能性を高めるうえで欠かせない考え方といえるでしょう。

第2章:なぜ地域ファンづくりが重要なのか

地域ファンづくりが注目される背景には、観光を取り巻く環境の大きな変化があります。

1. 観光市場の成熟と人口減少

国内観光市場はすでに成熟期に入り、単に「来訪者数を増やす」だけでは成果が見えにくくなっています。加えて人口減少が進む中で、一度きりの来訪者に依存するのではなく、地域と長期的に関わってくれる人を増やすことが持続可能性につながります。

2. 消費から「関係」へのシフト

旅行のトレンドは「モノ消費」から「コト消費」、さらに「関係消費」へと広がっています。単なる観光体験に満足するのではなく、地域の人や文化と関わり、共感を得る体験を求める人が増えているのです。

3. 地域外からの支援・関わり

ファンとなった人々は、現地を訪れるだけではありません。ふるさと納税や特産品の購入、オンラインでのコミュニティ参加を通じて、日常的に地域を応援するようになります。こうした関わりは「関係人口」と呼ばれ、地域経済や社会の支えとなっています。

4. EBPM(証拠に基づく政策立案)への対応

観光政策や補助金の成果を振り返る際、来訪者数や消費額だけでは評価しきれない効果があります。地域ファンの存在を数値や事例で示すことができれば、施策評価の説得力が高まり、次にもつなげやすくなります。


地域ファンづくりは、観光を「一時的な消費」から「継続的な関係」へと進化させる取り組みです。これからの観光施策において、避けて通れないテーマだといえるでしょう。

第3章:データで支える地域ファンづくり

地域ファンを増やしていくには「思い」や「つながり」が大切ですが、それだけでは施策の効果を測ることができません。限られた予算や人員で効果的に進めるためには、データを活用してファンづくりを科学的に支える視点が欠かせません。

1. STP分析でターゲットを明確化

観光客を属性や行動でセグメント化し、どの層がファン化しやすいのかを見極めます。たとえば「文化体験重視の30代女性」や「子連れで年1回訪れるリピーター」など、ターゲットをデータで絞ることで施策の精度が上がります。

2. LTV/CEVでファンの価値を可視化

一度訪れた観光客が「生涯で地域にどれくらい貢献してくれるか」を数値化する。宿泊や飲食だけでなく、ふるさと納税や特産品購入、SNSでの発信効果まで含めれば、単なる旅行中の消費額を超えたファンの価値が見えてきます。

3. カスタマージャーニーで関わりの流れを把握

旅行前・旅行中・旅行後の行動をデータで追うことで、「認知から再訪まで」の流れを可視化。どの段階で離脱が多いか、どの体験が共感や口コミにつながっているかを明らかにできます。

4. データを用いたパーソナライズ施策

収集したデータを分析すれば、「この観光客は次に再訪する可能性が高い」「この層には特産品ECが響く」といった予測が可能になります。適切なタイミングで情報を届けることが、ファンとの関係を深めます。


データを活用すれば、地域ファンづくりは「感覚的な取り組み」から「戦略的なプロセス」へと変わります。結果として、観光事業者も行政も施策の効果を説明しやすくなり、次の投資や政策にもつなげやすくなるでしょう。

第4章:事例紹介:青森県の取り組み「青森びいき」

青森県は2024年、全国でも珍しい「公式ファンコミュニティ」を立ち上げました。その名も 「青森びいき」。この取り組みは、地域ファンを「育てる」のではなく、「共に地域をつくる仲間」として迎え入れる点に特徴があります。

1. コミュニティの立ち上げと仕組み

  • 名称決定もファン参加型
    プレオープン時点で約1,000名が参加し、コミュニティの名称「青森びいき」は投票によって決定されました (PR TIMES)。
  • 多様な参加形態
    会員はSNSを通じて一方的に情報を受け取るだけでなく、自ら投稿するなど、双方向に参加できます。単なる「情報の受け手」ではなく、地域観光を一緒に形づくる「共創の場」となっています。

2. ファンの声から生まれた観光商品

  • ファンがアイデアを出し、それを事業者と共に形にする仕組みを導入。
  • 実際に商品化された例:
    • 「温泉でご自愛コース」…タクシー会社と連携したリラクゼーション型ツアー
    • 「立佞武多(たちねぷた)コンセプトルーム」…祭りの世界観を体感できる宿泊プラン

(参考:Findzero記事

3. 成果と意義

  • 「青森が好き」という想いを共有できる場が生まれ、参加者同士が地域への愛着や体験を語り合えるようになりました。
  • 情報があふれる時代において、自分が本当に知りたい青森の魅力や最新情報を効率的に受け取れる場となり、ファンにとって安心できる情報源となっています。
  • 県外在住のファンにとっても、コミュニティを通じて青森との関わりを継続できる仕組みが整いました。

まとめ

観光施策のゴールは単に「来訪者数を増やすこと」や「消費額を伸ばすこと」だけではありません。地域を繰り返し訪れ、応援し続けてくれる“ファン”を育てることこそが、持続可能な観光の鍵になります。

青森県の「青森びいき」に見られるように、ファンが思いを語り合う場があることは、地域との関わりを深める大きな力になります。こうした仕組みがあることで、地域外に住む人でも継続的に関わり続けることが可能になり、観光地としての価値が一過性ではなく積み重なっていきます。

地域ファンづくりは「観光客を呼ぶ」だけの施策から、「地域と人との関係を育む」施策へとシフトするための重要なステップです。そしてデータ分析やAIを活用すれば、その関係性を数値として可視化し、政策や施策の根拠にまで高めることができます。

DeepGreenは、「データとAIで地域の未来をデザインする」という想いのもと、地域ファンづくりを後押しする新しい仕組みづくりに取り組んでいきます。