着地型観光とデータ活用|地域に根ざす旅を、テクノロジーで読み解く

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はじめに|「地域から始まる観光」の時代へ

旅行会社が組んだパッケージを買って出発する──
そんな「出発地型」の観光に代わって、いま注目されているのが「着地型観光」です。

着地型観光とは、旅行先である地域が主体となって企画・提供する観光の形。
地元の人々との交流、暮らしや自然に根ざした体験など、「その土地でしかできない価値」が評価されています。

観光のあり方が多様化する中で、地域自らが観光をつくる時代が始まっています。


着地型観光が求められる背景

社会変化内容
コロナ後の旅行観密を避け、都市部を離れ、地域の暮らしに触れる旅へのシフト
観光の多様化モノ消費からコト消費・トキ消費へ。「観光地らしさ」より「地域らしさ」
地域経済の再構築持続可能な収益モデル・関係人口の創出が求められるように

地域主導の観光にはどんな課題があるか

着地型観光は理想的に見えますが、立ち上げや運営には課題も多くあります。

  • 「どんな人が、何を求めて地域を訪れているのか」が見えづらい
  • 地域資源を観光商品化するには主観に頼らざるを得ない
  • 体験の評価が感想ベースになり、データとして蓄積されない
  • 成果が“お金”や“数”で見えづらく、継続的な意思決定が難しい

こうした課題に対して、データ分析やAIを通じた“観光行動の可視化”や“地域資源の発見”が新たな可能性を拓くかもしれません。


着地型観光とデータ活用|いま見え始めていること


1. 観光客の動きと関心を“見える化”する

例えば、スマートフォンの位置情報や交通データ、クレジットカードの決済データを分析すれば:

  • 「どこから・どのタイミングで・何目的で来ているのか」
  • 「どのエリアに滞在し、どこで消費しているか」

といった行動の全体像が浮かび上がります。

これにより、季節や時間帯、国籍や世代ごとに求められる体験や導線を読み解くことができます。


2. 地域資源の“隠れた魅力”を発見する

地域の資源は必ずしも観光名所とは限りません。
しかし、SNS投稿やレビュー、会話データ、写真などには、

  • 地元のパン屋で「旅の目的が変わった」
  • 川沿いの夕焼けが「静かに心を動かした」
  • 路線バスの揺れが「旅の記憶に残った」

といった非構造データの中に「価値の種」が眠っていることがあります。

自然言語処理や画像解析を通じて、従来のマーケティング調査では見えなかった観光価値が掘り起こせるかもしれません。


3. “関係人口”の芽を追跡する

着地型観光が目指すのは、単なる「一見さん」を超えて、地域との継続的な関係をつくること。
訪問履歴や再訪傾向、SNSでの接触履歴などを分析することで、

  • 初回訪問から関係性がどう深まっていくのか
  • どんな体験が“心に残る記憶”になるのか

といった、観光の「その後」の可視化にも挑戦できます。


テクノロジーは“地域の解像度”を上げる道具

着地型観光とは、本質的には「地域の人が、地域のために、観光をつくる」こと。
私たちのようなデータ・AIを扱う立場は、その営みに過剰な技術ではなく、ちょうど良い補助線を引く存在でありたいと考えています。


まとめ|“地元の旅”をどう磨いていくか?

観光は「人と人をつなぐ活動」であり、
着地型観光はその出発点に地域自身の想いがあります。

そこにデータやAIが加わることで、

  • 観光客の振る舞いに基づいた“ニーズの理解”
  • 思いがけない魅力の“発見と言語化”
  • 継続的な価値創出の“判断材料の提供”

といった、新しい可能性が広がると考えています。


今後、地域資源の魅力を発掘する実験や、来訪者の行動パターンを可視化する仕組みなども、データ分析の得意分野として探究していきたいテーマです。

旅の未来は、データの中にあるかもしれません。
それは決して無機質なものではなく、地域の物語を深く理解し、言葉にしていくプロセスだと、私たちは信じています。

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