オフピークに人を呼び込むには?データを活用して観光の平準化を目指す

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朝・夜の観光とデータで読み解く“なだらかな観光需要”のつくり方


はじめに|「この日は人が多すぎて何もできなかった」──観光地が抱える波の課題

人気観光地である京都、鎌倉、箱根、飛騨高山…。
誰もが一度は憧れる街ですが、その人気が逆に、観光の体験価値を下げてしまうこともあります。

  • バスも電車も超満員
  • 写真も撮れない混雑スポット
  • 飲食店に入れず疲れ果てる

こうした状況が生まれるのは、観光需要の“偏り”が大きな要因です。

いま注目されているのが、需要をオフピークに「分散」させる観光戦略──つまり、観光の“平準化”です。


オフピークとは?なぜ人が集まらないのか?

観光のオフピーク(閑散期・閑散時間帯)は、主に以下のようなタイミングです。

  • 平日
  • 季節イベントがない時期
  • 朝・夕方以降(夜)

これらは旅行者にとって「避けがち」な時間でもあります。

  • 平日は仕事があり時間がとりにくい
  • 季節感のない時期は魅力が伝わりにくい
  • 朝や夜の時間帯は情報や体験コンテンツが少ない

つまり、“行かない”のではなく、
“積極的に行く理由が無い”のが現状です。


■京都市の先進的な取り組み:朝観光・夜観光のすすめ

実は京都市はすでにこの課題に取り組んでいます。

「観光の満足度を下げる混雑を回避するために、早朝や夜の時間帯の観光を提案する」
(出典:京都観光Navi – 朝観光・夜観光のススメ

  • 早朝の空いている時間に寺社を堪能する
  • 夜に特別公開される寺院やライトアップを楽しむ
  • 落ち着いた時間帯に伝統工芸や食文化に触れる体験の紹介

観光地が“観光客に時間を分散して来てもらう”ことを明確に発信している好事例です。

ただし現時点では、混雑が観光客・地域住民への影響を及ぼしているため
旅行者側への伝え方・データに基づいた戦略強化が、これからの課題といえるでしょう。


観光需要を「分散」し、「誘導」するためにデータができること

ここからは、観光の平準化に役立つ具体的なデータ活用法をご紹介します。

1. 人流データと混雑時間帯の可視化

  • GPSやモバイルWi-Fi、カメラ画像などを活用
  • 時間帯別・施設別に混雑を“見える化”

→ 「10〜13時に集中しているから、少し離れたエリアの飲食店へ誘導して混雑を緩和させる」
など戦略設計が可能


2. 満足度×訪問タイミングのクロス分析

  • 口コミやアンケートに訪問時間帯の情報項目を設けて実施
  • 混雑と満足度の関係を数値化

→ データを分析して事前予約制や入場人数を制限するなどの施策へつなげることができる


3. ダイナミックプライシングによる平準化促進

  • オフピーク時間帯や平日宿泊に価格インセンティブをつける
  • 需要を予測することで従業員のシフト調整や材料の仕入れも最適化する

→ 売上の最大化と支出の合理化で利益の増加


4. 見込みリピーター層へのターゲティング

  • すでに訪問している層に早朝や夕方以降の定番とは異なる魅力を訴求する
  • 訪問者の属性を分析し、アクセスしやすい×1回のみの訪問者が多いエリアなどを特定する

→ ターゲットを見極めて的確な広告配信やDM施策を実施


まとめ|“静かに楽しむ観光”の時代へ

これからの観光は、「にぎやかで人気」なだけでは地域が疲弊してしまうため、持続可能な地域を目指すことが求められます。
オフピークにも観光客を誘致できるかどうか、はリピーター創出にもつながり、地域資源の開発・活用にも寄与するなど、地域の発展に大きく関わります。

そのためには、

  • 混雑の把握・可視化
  • 時間帯別の価値設計
  • 旅行者の属性理解とタイミング誘導

といったデータに基づく戦略設計が不可欠です。
“時間を分けて受け入れる”という視点は今後ますます重要になるでしょう。

観光は「量」から「質」へ。
そして今、“質を支えるデータ”の時代が始まっています。

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