地域人材と関係人口の不足をどう解決するか──外部連携と育成戦略を支えるデータの活用法

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はじめに:観光は「人」がつくる体験

観光まちづくりにおいて、自然や文化、食といった地域資源はたしかに大切です。
しかし、それらを訪問者に「体験」として届けるために欠かせないのが、人の存在です。
案内してくれる人、受け入れてくれる人、関係をつないでくれる人——
地域の観光は、こうした“関係を媒介する人材”がいてこそ成立するものです。

ところが近年、全国の地方自治体や観光事業者からは、こんな声が多く聞かれます。

  • 「ガイドや体験を提供できる人材が足りない」
  • 「地域おこし協力隊の任期後の定着率が伸び悩んでいる」
  • 「若者が観光業に就きたがらない」
  • 「関係人口を増やしたいが、継続的な関わりが生まれない」

これは単なる“人手不足”ではありません。
より本質的には、「地域と関わる人の流れや関係性を設計できていない」ことが課題なのです。


人がつながる地域には、持続性が生まれる

本記事では、「地域人材・関係人口の不足」をテーマに、

  • 地域で観光体験を支える人材がなぜ不足しているのか
  • 若者が観光業で働きたいと思える仕組みについて
  • 関係人口を戦略的に“見つけ、育てる”方法はあるのか
  • データやデジタルツールを使ってどう支援できるか

といった視点を、分析・ロジック・デザインの観点から深掘りしていきます。

観光資源があっても、「人」がいなければ地域は動きません。
そして今、その“人の関わり”は、テクノロジーと仕組みによって新たにデザインできる時代です。

第1章:現地で“観光体験”を支える人材がいない

観光は「人の体験」であり、体験の質は“誰と出会ったか”によって大きく左右されます。
しかし、多くの地域では、訪れた人と地域とをつなぐ“媒介者”が不足しているという課題に直面しています。

  • 観光ガイドや通訳案内士がいない
  • 地元の人が案内したくても、時間や収益性の問題で難しい
  • 季節やイベントに頼った一時的な稼働にとどまり、継続性がない(雇用を維持できない)

その結果、せっかくの地域資源も「ただ眺めて終わる」「情報がないから立ち寄らない」といった、“体験化されない観光”になってしまいがちです。


地域住民の高齢化と担い手の限定性

観光の受け入れやガイドを担っていた地域のキーパーソンが高齢化し、後継者がいないケースも増えています。
また、観光業が地域にとって「副業」や「お手伝い」の範疇である場合、安定的な人材供給にはつながりません。

さらに、小規模自治体では人材バンクや地域団体のネットワークが限られ、担い手候補の「発掘・育成・定着」の仕組みが整っていないことも課題です。


解決策:外部人材との柔軟な連携モデル

このような状況において、注目されているのが“外から関わる人”を戦略的に地域に組み込むことです。

具体例:

  • デジタルノマド:ワーケーションや多拠点居住を通じて、期間限定で地域と関わるスキル人材
  • 地域おこし協力隊:数年の任期を通じて地域活動に従事する制度人材。観光やガイドの担い手として活用
  • プロボノ(副業・ボランティア):本業のスキルを活かしながら、休日・副業枠で関わる都市部人材

こうした人々が、地元の人材と混ざり合いながら「関わる人材の多層化」を実現することで、持続可能な観光受け入れ体制の構築が可能になります。


成功の鍵は「関係の継続性と支援設計」

外部人材をただ受け入れるだけでは、すぐにまた“ゼロ”に戻ってしまいます。
継続的に関わってもらうためには、次のような支援や設計が欠かせません:

  • 関係を維持するためのオンライン接点・活動報告・ネットワークの場
  • 「また来たい」「貢献できた」と思える役割の設計とフィードバック
  • 活動成果を可視化・評価し、地域側も次のステップに踏み出せるロジックモデルの活用

こうした「人との関係をどうデザインするか」が、観光人材の持続可能性に直結します。

第2章:若者が観光業を“キャリアの選択肢”として見ていない

地域観光を持続可能な形で支えていくためには、次世代を担う若者たちが自らの意思で関わり続けられる仕事として観光を選べる環境が必要です。
しかし現実には、観光業に対する若年層の就業意欲は高いとは言えず、特に地方では人材の確保が大きな課題となっています。


観光業に対する“イメージの壁”

観光業は「やりがいはあるが将来性が見えにくい」という印象を持たれがちです。
たとえば以下のような認識が、若者にとっての心理的なハードルになっています:

  • 接客業・サービス業としてのイメージが強く、キャリアの幅が限定的に見える
  • 季節や観光需要に左右される不安定な職種と思われている
  • 地元で働くこと=選択肢が狭い、という固定観念が根強い

こうした状況では、観光分野に高い関心を持っていても、就職先として検討されないまま進路選択から外れてしまうというケースが多くあります。


解決策:キャリア支援と育成プログラムの再設計

この課題に対しては、観光業を「地域×創造性×テクノロジー」の分野として再定義し、若者に届く文脈で伝えることが重要です。

具体的には:

  • 観光DX・マーケティング・地域ブランディングなどの職域を含めた広義の観光キャリア像の提示
  • 地域課題に関心を持つ大学生・専門学生に向けた短期実習やフィールドワーク型の育成プログラム
  • 移住やUターンを見据えた長期インターン・副業連携型の就業支援
  • 観光業に携わる人材の可視化とロールモデル紹介(働き方や成長ストーリー)

こうした仕組みを通じて、「観光業=やりがいはあるが不安定」ではなく、「地域を動かす仕事」「人の感動を生み出すキャリア」として位置づけ直すことが求められます。


求められるのは“継続的に関われる関係性の設計”

若者を一時的に呼び込むのではなく、「関わり続けられる」ことが重要です。
そのためには、就業前から地域との接点を持ち、キャリアとしての選択肢として認識してもらうだけでなく、関わり始めた後の成長機会や可視化されたキャリアパスの整備が不可欠です。

観光に関わることが、“地域で暮らし、働き、未来をつくる手段”として認識されれば、若者が自然と地域に残る・戻る流れも生まれてきます。

第3章:データで見える“関わりしろ”と“人の動き”

「関係人口を増やしたい」「地域と関わる人を可視化したい」——
そうした声は多くの地域から聞こえてきますが、実際には「誰にどうアプローチすればよいのか」が明確でないまま、闇雲な施策が繰り返されていることも少なくありません。

このような状況において有効なのが、データに基づいて“地域と関わる可能性のある人”=関係人口の予備軍を見つけ出すアプローチです。


デジタルデータから“関係のタネ”を読み解く

現代の観光体験は、スマートフォンやSNSの活用を通じて、数多くのデジタルデータを残しています。
たとえば以下のような情報は、関係性の兆しを見つける上で極めて有効です:

  • 複数回の来訪履歴:再訪している人は、地域との関係性を深める可能性が高い
  • 長時間滞在・複数施設利用:ただの通過者ではなく、地域の価値を実感した可能性
  • SNSでの投稿やレビュー:地域について自発的に発信している人は、共感性・発信力が高い
  • 滞在後のメルマガ・LINEお友達登録:観光後も地域に関心を持ち続けている人

こうしたデータを統合・分析することで、「地域ともっと深く関わりたいと思っている人は誰か」を浮かび上がらせることが可能です。


可視化すれば、関係性は育てられる

見えてきた関係人口の予備軍に対して、関係を一歩深めるアプローチを施すことができます。

たとえば:

  • リピーター向けに「地域の裏側を案内する限定イベント」や「地元との交流の場」を提案
  • SNSで地域の情報を発信してくれた人に、オフィシャルな“サポーター制度”を案内
  • 過去に参加したアクティビティから興味関心を推測し、継続的なメール配信や関係機会を設計

このように、データに基づいた関係性設計によって、点の来訪体験を“線としての関係”に変えることが可能になります。


データは“追跡”ではなく“関係性づくり”のために使う

データを活用するというと、プライバシーの問題や過度な管理の印象を抱かれることもありますが、私たちが重視するのはあくまで、「人と地域がより良くつながるための補助線」としての使い方です。

数値の裏にある感情や動機に目を向け、誰が・なぜ・どのように地域と関わりたいと思っているのかを理解するためのデータ活用が、関係人口戦略の第一歩となります。

第4章:DeepGreenの支援──人と地域の関係性を“設計する”仕組みづくり

DeepGreenでは、地域の観光振興や関係人口創出における課題に対し、データ分析・ロジック設計・デジタルツールの活用を通じて「人の関わり方そのものをデザインする」支援を行っています。

ただ人材を集めるのではなく、地域と人の間に持続可能な関係性を築くための“仕組み”を整える。それが、私たちの提供価値です。


地域×人材マッチングのための可視化支援

  • 観光・体験事業・地域資源に対する人的ニーズの棚卸し
  • デジタルノマドや関係人口に関心のある人の行動パターン分析
  • SNS・予約・滞在・移動履歴から、関係構築に向いた対象群を特定

→ 「どんな人と、どんな形で関係を育めるか」を地域ごとに可視化し、マッチング戦略を設計します。


ユーザーの役に立ちながら、関係構築のためのデータを集める

DeepGreenが注力しているのは、「ただ追跡する」のではなく、ユーザーにとって役立つ価値を提供しながら、関係づくりに必要なデータを自然に得られる仕組みです。

たとえば:

  • 街の観光ガイドWebアプリの開発・導入支援
     → 観光スポットや飲食店のおすすめ情報をスマホで確認できるだけでなく、ルート検索・イベント通知・周遊スタンプラリーなどの機能を搭載
     → GPS情報や閲覧履歴から「どのエリアに関心があるか」「どこで滞在しているか」などを収集・分析
  • 地域と関わる意思を可視化するインタラクション設計
     → 気に入った場所に「♥」や「応援」ボタンを押せる機能、簡単なアンケート、参加申し込みフォームなどを通じて関係性の“種”を見つける

こうした設計により、ユーザーの満足度を高めつつ、関係性の兆候を見逃さないデータ基盤が整備されます。


育成・支援プログラムのロジックモデル化

  • 地域での活動を単発にしない人材育成プロセスの構築支援
  • 体験→関係→定着という段階的関わりモデルの設計
  • 教育・インターン・副業支援など複数施策の因果関係整理と効果測定

→ 継続可能なプログラムとして計画・実行・評価が回せる設計図を提供します。


データに基づく改善・評価体制の構築

  • 来訪者・参加者の属性や動向を追えるダッシュボードの構築
  • 活動ログ・アンケート・SNSなど複数データを統合して分析
  • 関係人口創出の効果測定とPDCAが可能な仕組みづくり

→ 「何が、どれくらい効果を上げているのか」を明確に説明・改善できる仕組みを支援します。


このように、人と地域が出会い、関わり、育まれていく関係性の全体設計を、テクノロジーとロジックの力でサポートすることが、DeepGreenの強みです。

おわりに:人が関わる地域は、動き続ける

観光地の未来を考えるとき、風景や施設といった「モノ」に目が向きがちですが、実はそれ以上に大切なのは「人」の存在です。
地域に訪れた人に声をかける案内人、地元の魅力を伝えるガイド、観光業に従事する若者たち。こうした“人がつくる関係”こそが、観光体験の中核であり、リピーターや関係人口の醸成にもつながっていきます。

しかし今、多くの地域では、こうした「関係の担い手」が不足しています。
これは一過性の人手不足ではなく、地域と関わる人の関係性をどう設計し、育て、定着させるかという構造的な課題です。


テクノロジーと仕組みで「関わり続けられる地域」へ

DeepGreenは、この課題に対して、データ分析やAI、ロジックモデルの力を活用することで、地域と人の関係性を再設計します。

  • 単なる来訪者を関係人口に変える仕組み
  • 街を楽しみながらデータが集まる観光ガイドアプリの導入
  • 継続的な評価と改善を可能にするダッシュボード設計

これらは、すべて「人が地域に関わり続けられる環境」をつくるための具体的な手段です。


関係人口は、デザインできる

関係人口の創出や地域人材の確保は、偶然に任せる時代ではありません。
むしろ、地域の魅力と人の関心が重なる“関係の接点”を可視化し、その接点をつなぎ、育てる仕組みを意図的に設計することで、持続可能な関係を築くことが可能です。

地域と関わる人が一人、また一人と増えていくことで、地域は少しずつ動き出します。
そしてその動きこそが、観光まちづくりにおける最も力強いエンジンなのです。